松菱くんのご執心
「それで、岡野に付きっきりで?」
聞いたのは真結ちゃんだ。昼休みの屋上でわたし達四人はのんびりしていた。
テスト最終日、四限まであったテストも無事に終わった。
「そうなんだよ。
僕が頼れるの松菱殿しかいないからさあ」
ここ数日の疲労からか、岡野の目の下には隈ができている。
「その、松菱殿ってのやめろよ、恥ずかしい」
松菱くんは頭をかく。でも、どこか満更でもなさそうなのが、ちょっとキュンとした。
「いいじゃないか。外見は信長、中身は徳川。みたいな」
岡野は指をたてて言う。
そして、何かを思い出したのだろうかピンっと指を弾いた。
「いやさあ、担任も徳川推薦だったんだよ、驚いたことに。
ひとしきり警告した後に言ったんだよ担任が、『分からないところは松菱に聞け』ってさ」
「分かってるじゃん、私たちの担任」
真結ちゃんの言葉にわたしも頷く。
案外、見てないようで見てるんだな。