松菱くんのご執心



そしてその来週となった今日には待望のテスト返却のイベントが待ち構えている。



 教室内にはいつにない緊張感に包まれ、皆が落ち着きなくそわそわとしていた。



 廊下側の席の岡野はその中でも断トツの緊張感で、

貧乏ゆすりが止まらないのか、ガタガタと岡野の机だけ、

震度五レベルの地震が起きていた。



 その隣で真結ちゃんが、


「大丈夫。もしテスト悪かったら、わたしから松菱くんに報告してあげるから」


と、よく通る声で、励ましとは到底思えない励ましをしていた。



「あんなに緊張するなんて、よっぽど頑張ったんだね、岡野」


わたしと同じように松菱くんも、そんな岡野を見ていたらしく、


「俺、あいつのことにあんまり詳しくは無いけど……。

俺が教えて、ペンを走らせてる岡野は、

詳しい人が見ても、

いつになく真剣だったって言うと思うぞ」


とぶっきらぼうに言った。でも彼の表情はとても和やかで、「岡野は大丈夫だ」と確信しているようでもあった。


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