松菱くんのご執心


「お前、みかさっていうのか」


「うん。白羽根 みかさって言います」



なんだか、改まって自己紹介をしてしまった。
気恥しさと、よろしくの意味を込めてペコッと頭を下げる。



「えっと………あなたは?」


「俺は、松菱 秀一」



わたしはふむふむと相槌をうつ。



「まつひし しゅういち、ってなんだか噛みそうな名前だね」


「慣れればどうってことない」


平然と松菱くんは言う。


「大体のことは、慣れたらどうってことないよ」


「それもそうだな」



 授業はいつの間にか再開していて、周りも平静を取り戻していた。



わたしは黒板に目を向けシャーペンを走らせる。



 一番後ろの席だから私語が聞こえなかったのか、不良少年が怖くて注意出来なかったのかは分からないけど、



授業はわたし達に構わず、どんどん先へ進んでいった。



「昼さ、一緒に食わねえ?」


 授業も中盤に差し掛かった頃、松菱くんは口火をきった。


「わたしと?」


「そう、みかさと」松菱くんはわたしに指を向ける。


「どこで?」


「それは……決まってんだろ」


その決まってるとは、松菱くんの中で決まっていることなのか、
それとも一般的に、世間的に決まっていることなのか。



まずは、行ってからしか分からない。




< 7 / 148 >

この作品をシェア

pagetop