松菱くんのご執心
そして昼休み、わたしは屋上に来ていた。
松菱くんと一緒に。
「風、強いね」
わたしはスカートが煽られないように、裾を押さえる。
「どこで食べよう」
「こっち、風から死角になってるから、ここおいで」
手招きされ、ついて行く。
建物が風避けになって、無風も同然の場所だった。ここだったらゆっくりお昼が食べられそうだ。
二人並んで座りこむと、まるでピクニックに来ている気分になった。
真っ青な空に白の絵の具をハケで擦ったような雲がかかっていて、
油絵を空に貼りつけたような天候に、ぼーっと目を奪われる。
たまには外で食べるのもありだなと思った。
「お腹すいたね」
「久しぶりに授業でて、すっげえ疲れた。腹も減ったし」
わたしはお弁当を、松菱くんはコンビニの袋からパンを取り出して食べた。
「松菱くん、やっと学校来てくれたね」
「この学校でそういう風に声をかけてくれるやつは、みかさだけだ。まあ、こんな成りだから仕方ないけどな」
その天然もののような金髪を弄び、その隙間からはリングのピアスが覗いた。