松菱くんのご執心
「あ、着替えてる」


松菱くんの後から声がした。


「僕の用意した服が役に立ったみたいだね」



岡野がダンボール箱を抱えてやってくる。



「露出ゼロの服で、この可愛さは反則だよな。岡野ありがとう」


「いいよ。勉強教えてもらったんだから、これくらいの事は容易い御用だ」


わたしの都合はお構い無しに盛り上がる二人。

わたしは熱くなった顔を手で仰いで冷ます。



 あのお、その衣装の被害者なんですが、とおずおず手を挙げても良さそうだ。



 松菱くんは、私の肩に手を置いて、情けない表情をする。


「多分、俺はみかさがどんな格好でも、人の目に触れるのが嫌らしい」


と、宣言通りの重さでわたしを困らせた。

松菱くんは賑わっている教室に視線を向けて、ため息を着く。


「まあでも、今日は特別に許そう」


 仕方なくといった具合いだったが、接客に出てもいいとゴーサインがでた。


なぜ、松菱くんの許可がいるのかは分からないが「まあ、いいか」と、わたしは鷹揚に構えていた。



 好きな人からの心地よい束縛には、キュンとして、

少し嬉しくも思っている自分がいるのだ。



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