松菱くんのご執心
「あれ?」と松菱が入口を見た。


「三木さんと戸黒さんだ」



つられて入口を見ると、三木さんがわたし達の教室を覗いていた。

動く度に腰のチェーンがじゃらじゃらと音を立てている。



そして、その後ろには戸黒さんがいた。


生憎、席は満席だったのだが、


「秀一ー。いるかあー」と、つかつか入ってきた三木さんは、

あろう事か爽の席の前に腰をおろし、


「相席いいか?」と聞いている。



もう座ってるじゃないか、とそこに居る誰もが思っただろう。



爽も顎を引いて「ど、どうぞ」と戸惑った様子だった。


後ろに続いた戸黒さんもしれっと三木さんの隣に腰をおろす。



「松菱くん、挨拶しておいでよ」


「そうだな。ついでにあいつのホットケーキも出してくる、不本意だが」


 わたしは苦笑いを浮かべる。


松菱くんはホットケーキを持って席へ向かった。

爽と松菱くんが顔を合わせるのにはひやひやしたが、



「なんか、すまんな」


と松菱くんが爽に謝り、ホットケーキを差し出す。


「ああ、いや。大丈夫だよ」


 三木さん効果なのか、爽も突っかかることなく返事していた。


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