松菱くんのご執心
思い出すのは文化祭の最終日、
松菱くんが電話を終えて戻ってきた時の出来事だ。
彼は事態は一変したような険しい顔つきスマホを握りしめていた。
そしてわたしとゆっくり視線を合わせて、
「今までの悪行のつけは払わなければな……それくらいは甘んじて受け入れる。
仕方ないといえば仕方ないけれど、愚かだよ俺は……」
としんみりとした笑顔を見せていた。
「え、それどういう事?」
と嫌な予感に彼の肩を揺する。
「男のけじめだよ。みかさは女の子だから分からないかも知れないけど、あるんだよ男にはやるべき事がさ」
「危ないことじゃないでしょうね」
「心配ねえよ、喧嘩はしねえから。言ってたろ? 自分を傷つけるなって。ちゃんと守るから。自分も、相手も傷つけない」
「約束だよ?」
「もちろんだ」
この会話が全てを物語っていた。
この時、強く引き止めていれば良かったと後悔しても、
もう遅いのだ。