松菱くんのご執心
無機質に佇む松菱家を見上げ、ぐっとインターホンを押す。
「はーい」
と呑気な声が返ってくるのを期待していた。
が……悪感はますます強くなる。
こちらも、うんともすんとも言わなかった。
わたしはスマホを取り出し、この周辺の児童福祉施設を検索にかける。
ヒットしたのは幸い、ひとつだけだった。
こんなことになるなら、三木さんの電話番号を聞いておくべきだった、と若干の後悔が押し寄せた。
わたしはヒットした児童福祉施設に電話をかける。
事務的な自己紹介が電話越しに聞こえてきたので、わたしも簡潔に名乗り、
「三木さんという方がいるか」とざっくり、そんな感じの内容を尋ねた。
「はい。おりますが、ただいま外出中でして、良ければ伝言を承りますが」
ついつい外出中かあ、と悔しい声がでそうになるのを堪える。