僕が愛しているのは義弟
優真くんの場合は、葵の母さんが充希ちゃんのお父さんでもある元恋人の人と再婚してから生まれたわけだから、当然、葵が兄ということは知らない…………。
葵は、充希ちゃんと優真くんに自分が兄と伝えることは…………きっと……一生……ない……のかも……しれない…………。
……いや、葵のことだから、『ないのかも』ではなく『ない』のだろう…………。
「……じゃあ…………元気で…………」
葵の母さんは葵にそう声をかけた。
「……うん…………あなたも元気で…………」
葵は葵の母さんにそう言った。
葵は、充希ちゃんと優真くんが目の前にいたので自分の母さんのことを『あなた』と呼んだのだろう…………。
葵の母さんは充希ちゃんと優真くんに寄り添いながら歩いて行った……。
葵の母さんと充希ちゃんと優真くんが歩いて行く姿を葵は、やさしく静かに見守っ
た……………。
葵の母さんたちと別れて、またオレたちは、ゆっくりと歩き出した。
オレは横目で葵の顔を見る。
葵は何事もなかったかのように、いつものクールな葵だった。
「……隼翔兄」
「うん?」
「……さっきのこと父さんには…………」
「言わないよ」