僕が愛しているのは義弟
「……ありがとう」
葵の母さんとばったり会ったことはオレと葵の二人だけの秘密になった。
「……隼翔兄」
突然、葵の声が重くなった。
「うん?」
「……オレ……もしかしたら…………父さんのことを……苦しめているかも……しれない…………」
「え……?」
「今日、十年ぶりに母さんと再会して改めて思ったんだけど…………オレ、前よりももっと母さんに似てきた気がする。……そのことで父さんが辛い思いをしていないかなって…………」
葵…………。
「そんなことはないよ。義父さんは今、母さんとラブラブなんだから。……それに、大切な息子を見て辛いだなんて思うわけがないだろ」
「隼翔兄……ありがとう……」
葵は少しほっとしたように笑みを浮かべた。
そしてショッピングモールから帰ってきた、オレと葵。
「ただいま」
オレと葵が家に帰ると、義父さんは仕事から帰っていた。
「おかえり。葵、隼翔」
いつものようにやさしい義父さんの声。
「……父さん」
「うん?」
「父さん……」
「どうした? 葵」
「……ううん、何でもない」
葵はそう言うと、ソファーに座っている義父さんの隣にちょこんと座った。