僕が愛しているのは義弟



「だから勝手に話を進めるな‼ そのときも言ったけど、オレと倉田は何もないんだって」


「じゃあ、誰なんだよ。お前の好きな子は」


 ……だ……誰か、太一の質問攻めのスピードオーバーを取り締まって‼ という思いだった。


「だから、そういうのじゃないって。オレがお前に話していたのは……」


 ……って、あぶない‼

 太一に話していたのは葵のことだって言いそうになった。もし、そんなこと太一に言ったら…………。


「『話していたのは……』って、誰のことだよ」


 そんなこと太一に言えない。言いたくない‼


 ……それに…………恋だなんて…………。

 そんなわけないだろ。

 ……だって、いくら美少女のような見た目でも葵は男子だぞ。

 それに義理とはいえ、あいつは弟だ。オレの大切な弟だ。

 確かにそういう意味では葵のことは好きだ。

 でも、それは弟として、家族として、人としてであって、決して恋愛とかそういうのではない‼


「……だから、誰のことでもないし、恋とかそういうのじゃないって‼」


「……そう?」


「そうだ‼ お前はすぐそういう発想をする」


「……いや、その話を聞いたら誰だってそう思うぞ」


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