僕が愛しているのは義弟
悩みではない、疲れなんだ。
……だけど、今日の太一とのやりとりを葵に話すわけにはいかない。
……というより、話したくない。
「……本当? 大丈夫なの?」
葵は心配そうに言ってくれた。
「ああ、大丈夫だ。ありがとう、葵」
「大丈夫ならよかった」
葵は少し安心した表情をした。
オレは葵に、梓や太一たちと祭りに行くことになったことを話した。
「隼翔兄もその日に行くんだね。オレも美術部の仲間たちと行くんだ」
美術部の仲間…………ということは、ひよりちゃんも行くのか……?
オレは、なぜか心の中がざわついていた。
オレは葵に、ひよりちゃんも葵たちと一緒に祭りに行くのかを訊こうかどうか迷った。
でも、よく考えたら迷うも何も、そんなことをわざわざ訊く必要はないと思った。
そう思っていたら、
「じゃあ、オレたち向こうでばったり会うかもね」
と、葵は無邪気な笑顔で言った。
「そうだな」
オレは普通に返事をしたけど、まだ心の中はざわついていた。
なぜだかわからない。
わからないけど、オレの心の中のざわつきが治まるまでには時間がかかった。
そして、梓や太一たちと祭りに行く日がきた。