僕が愛しているのは義弟
「……あっ、いや、なんでもない」
オレは噓をついた。本当はなんでもないはずないのに……。
「そう? ならいいけど」
梓はそう言って川原さんや眞宮さんと、また店をまわりはじめた。
……って……と、いうことは……。
「隼翔~。ずっと梓あんな感じでオレが入る隙間が全くないんだよぉ~。なぁ、隼翔~、なんとか梓を川原さんや眞宮さんから引き離してくれよぉ~。そうじゃないと、梓と二人になれるチャンスがなくなってしまうんだよぉ~」
……やっぱり。
太一はオレにすがりつくように頼み込んできた。
……そんなことを言われても……オレが川原さんや眞宮さんに急に声をかけるというのも、あまりにも不自然じゃないか……?
「……太一……お前が直接梓に声をかければいいんじゃないか?」
「……それができれば苦労はしないよ」
太一は、すっかり元気をなくしていた。
オレは、どうしたらいいのか困ってしまった。