僕が愛しているのは義弟



 太一はオレにそう言ってくれた。


「お前、準備がいいな」


「まぁ、この季節はどんなに晴れていても、なんか信用できなくてな」


「……確かに。そうだな」


 この季節の天気は激しく変わりやすい。

 オレも折りたたみ傘を持ってこればよかったと思った。



 ……そういえば、葵……。

 オレは、葵も折りたたみ傘を持っていかなかったということを思い出した。

 葵は大丈夫だろうか……。

 オレは葵のことが心配になった。

 オレは周りを見渡した。

 葵は今どうしているのか、そればかりが気になった。


 オレは葵を探して周りを見渡していたそのとき……。


 ……葵‼


 葵と葵の美術部の仲間たちを見つけた。

 オレは「葵‼」と声をかけようとした。

 すると…………。


「……あれ、あそこにいるの葵じゃないか」


 太一も葵たちに気付いた。


「あれれ~、葵、女の子と相合傘してる~。なぁ、あの子、葵の彼女? かわいい子だな」


「…………」


 オレは、太一の会話が全く耳に入ってこなくなっていた。


 葵を傘の中に入れてあげていたその女の子は……ひよりちゃんだった。


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