僕が愛しているのは義弟



 オレの目に飛び込んできた葵とひよりちゃんの様子は……とても仲睦まじく感じた。

 オレは、葵とひよりちゃんの相合傘の様子を見て……なぜか心が締め付けられるような気持ちになった。

 ……なんで……なんでこんなにも苦しいんだ。

 なんでこんなにも…………。



「隼翔‼」


「……‼」


 ……太一。

 オレは太一の声に驚き過ぎて一瞬、声が出なかった。


「……どうした、太一」


「『どうした』じゃないよ。なにお前、ぼーっとしてるんだよ」


 太一にそう言われてオレは我に返った。


「……あっ、いや……」


「梓が、たぶん通り雨だろうから、その間、あそこのカフェでお茶しないかって」


「……そうだな、そうしよう」


 オレは葵とひよりちゃんのことが気になったけど、なぜかこれ以上、あの二人のことを見ていたくないという気持ちもあった。

 オレは逃げるように梓たちとカフェに入っていった。





 しばらくすると、梓の言う通り雨は上がった。


 それから少ししてからオレたちは、また店をまわりはじめた。



 雨上がりの濡れた道。

 オレたちは少し足元を気にしながら歩いている。

 ただ、雨上がりの風景も、また少し違った魅力を感じさせてくれる。


< 125 / 354 >

この作品をシェア

pagetop