僕が愛しているのは義弟



 そして、そろそろみんな帰る時間がきてそれぞれ解散した。



 みんな解散してオレと葵は家へ向かっていた。


 家へ向かっている間、オレはまた思い出したくないことを思い出してしまっていた。

 太一がオレに訊いたように、葵とひよりちゃんは付き合っているのか……?

 オレは葵に確かめる勇気がなかった。

 ……って、なぜ確かめる勇気がないんだ……?

 そんなことさらっと訊けばいいじゃないか。

 ……どうしたんだ、オレは……。

 オレは自分が一体どうしてしまったのかわからなかった。



「隼翔兄?」


 オレは葵に声をかけられて我に返った。

 今日、オレは何回、自分の世界に入り込んでいたことか。

 そしてそのときに葵や梓や太一に声をかけられて何回、我に返ったことか。


「……なんだった? 葵」


 オレは少しぼーっとした口調で葵に返事をした。


「隼翔兄、大丈夫?」


 葵は心配そうに訊いた。


「……あ、ああ、大丈夫。ありがとう、葵」


「……本当?」


「ああ」


「ならよかった」


 葵は安心した様子だった。


「隼翔兄、今日、みんなで店をまわることができて楽しかったね」


 葵は無邪気に言う。


「……ああ」


 オレは……複雑だ。


 
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