僕が愛しているのは義弟

　葵は、なんてことないようにそう言った。

　葵にとっては、なんてことないのかもしれないけど……オレにとっては…………そうじゃない……。

　なんでかはわからないけど、オレは葵のそのなんてことないような言い方に心の中が締め付けられる思いだった。


「……葵、ひよりちゃんと楽しそうだったな」


　……あれ？

　オレ、なんか、探りを入れている……？　なんで……。


「そう？　別に普通だったけど」


　葵のそのクールな返答にオレは、ますます探りを入れたくなる。


「そんなことないだろ。葵、すごく楽しそうに、ひよりちゃんと話してた。……で、何話してたんだよ、ひよりちゃんと」


　止まらない……。

　止めたくても……訊かずにはいられない……。


「別に大した話じゃないよ」


　葵はまだクールだ。

　そのクールさが余計に……。


「……へ～え、大した話じゃないのに、わざわざ通話するんだ」


　オレはいちいち言わなくてもいいことまで言っているという自覚はある。

　自覚はあるのに…………。


「……だって橘は友達だから、そういうこともあるよ」