僕が愛しているのは義弟



「あ……いや……何て言えばいいか…………とりあえず黙っておいた方がいいと思う。その間に二人でゆっくり考えよう」


 とりあえずは、そうするしかないよな。


「……隼翔兄がそう言うのなら」


 葵はいつもとは違う少し低めの声でぼそっと言った。


「……お前、なんかふてくされてないか?」


「……別に」


「お前、いつもクールで落ち着いているけど、本当は甘えん坊だったりするのな」


 そんな葵も愛おしく思う。


「そんなことない‼」


「……お前、すごくかわいいな」


 オレは葵をそっと抱きしめた。


 夢ではない……オレは、この腕で確かに葵のことを抱きしめている……。


「隼翔兄……」


「…………」


 オレと葵がいる部屋は物音ひとつないくらい静かでオレの心臓のドキドキが音漏れしそうなくらいだった。

 ……ドキドキ……治まれ……治まれ……。

 でも、そう思えば思うほど、その気持ちとは裏腹にドキドキは激しさを増していく。


「……隼翔兄の心臓の音……」


 えっ……‼


「ドキドキ……ドキドキ……」


 ……あ……葵‼ やめてくれ‼

 オレの心臓の音を聞かないでくれ‼


「……あ……葵……」


 は……恥ずかしい‼ 葵‼


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