僕が愛しているのは義弟



 オレは、今日、転校生が来たことを葵に話した。

 オレは悪気なく葵に遼祐は爽やかオーラがすごいというようなことも話した。


「……ふ~ん……その遼祐さんっていう人がすごく爽やかなんだね」


 葵の声が少し低くなった気がした。

 そして下を向いてしまった。


「……葵? なんかちょっと怒ってないか?」


 オレは葵に恐る恐る訊いてみた。


「……別に」


 やっぱり怒っている。

 オレは、どうしていいかわからない。わからないけど……。


「葵、ごめん。オレ、お前を怒らせるようなことを言うつもりじゃなかったんだけど、なんか言ってはいけないことを言ってしまったのなら謝る。本当にごめん」


「…………」


 葵は何も言ってこない。


「……葵?」


 オレは、ますますどうしていいかわからなくなってしまった。

 葵はまだ黙ったままだ。

 オレはもう一度、葵の名前を呼ぼうとしたそのとき……。


「……別に、謝ってほしいわけじゃない」


 葵がやっと口を開いた。

 でも、まだ下を向いたままだ。

 下を向いたまま葵は、また黙ってしまった。

 そして……。


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