僕が愛しているのは義弟



「そんなに謝らないで」


 葵はそう言うと、オレの胸の中に飛び込んだ。


「……葵」


 オレは葵をやさしく抱きしめた。


「……隼翔」


 葵はもっと深くオレの腕の中に潜り込むように抱きついた。


 そうしてほんの少しの間、沈黙した。

 そして……。


「……隼翔のバカ」


 葵は小声でそう言った。

 オレは葵のその言葉に少し戸惑った。


「えっ……? バカって……」


 オレはまだ戸惑い続けていた。

 葵になんて声をかけようか迷っていた。

 すると……。


「なんで遼祐さんの話ばかりするの」


 葵が小さな声でそう言った。


「あっ……いや……だってさ、今日、転校してきたばかりでオレの隣の席だし帰る方向も一緒だから、なんか縁を感じて……」


 オレは少し慌てた感じになってしまった。

 慌てたせいか、声の出し方まで慌てた感じがまるわかりの話し方になってしまった。


「なんで縁なんか感じるの? ……なんかそういうの嫌だ、オレ」


 葵はすっかりすねてしまった。

 オレは葵の機嫌を直そうと必死だった。


「でも、遼祐、結構いいヤツでさ。オレと太一も遼祐といい友達になれそうでさ」


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