僕が愛しているのは義弟
それから何日か経った、十月上旬のある休日。
オレと葵は絵画展に行った。
絵画展の会場に着き、オレと葵は会場の中に入った。
そして絵画を観ながらゆっくりと歩いていた。
葵は、一つ一つの絵画をその都度、足を止めて真剣に観ていた。
その表情はオレが見たことのない、もう一人の葵だった。
オレは、こういう葵もいるのだと新鮮な気持ちになった。
こうしてまだオレの知らない葵がいるのかもしれないと思った。
それが良いのか悪いのか、オレにもよくわからなかった。
オレは、そう思いながら葵の方を見ていると葵がオレの視線に気付いた。
「どうしたの? 隼翔」
そう言って葵もオレの方を見た。
葵にオレが思っていることを見透かされそうな気がしながらも、そんなことはないとも思った。
それなのに少し慌てている自分がいた。
「……いや……お前、本当に絵が好きなんだなと思って」
オレは慌てたせいか、ちょっと早口になってしまった。
「うん、好きだよ。描くのもそうだけど観るのもとても落ち着くんだ」