僕が愛しているのは義弟



 それから何日か経った、十月上旬のある休日。


 オレと葵は絵画展に行った。



 絵画展の会場に着き、オレと葵は会場の中に入った。

 そして絵画を観ながらゆっくりと歩いていた。

 葵は、一つ一つの絵画をその都度、足を止めて真剣に観ていた。

 その表情はオレが見たことのない、もう一人の葵だった。

 オレは、こういう葵もいるのだと新鮮な気持ちになった。

 こうしてまだオレの知らない葵がいるのかもしれないと思った。

 それが良いのか悪いのか、オレにもよくわからなかった。

 オレは、そう思いながら葵の方を見ていると葵がオレの視線に気付いた。


「どうしたの? 隼翔」


 そう言って葵もオレの方を見た。

 葵にオレが思っていることを見透かされそうな気がしながらも、そんなことはないとも思った。

 それなのに少し慌てている自分がいた。


「……いや……お前、本当に絵が好きなんだなと思って」


 オレは慌てたせいか、ちょっと早口になってしまった。


「うん、好きだよ。描くのもそうだけど観るのもとても落ち着くんだ」


< 183 / 354 >

この作品をシェア

pagetop