僕が愛しているのは義弟



 葵のことを抱きしめながらオレは葵に訊いてみたいことを思い浮かべていた。

 さっき遼祐と話していたときに気付いたあの質問。

 オレは葵に訊いてみようと思った。

 ……でも、どう訊けばいいのか、すごく迷っていた。

 なぜならオレと二人でいるときに葵は一度も進路の話をしてこなかった。

 それがなぜなのか、オレに進路の話をしたくなかったのか、それがよくわからない。

 そんなよくわからない状態で葵に簡単に訊くことができるのか……。

 そんなふうに思うのなら訊くことをやめておけばいいじゃないか……とも思ったのだけど…………でも訊きたい。

 葵に直接、進路のことを訊きたい。

 そして葵から直接、進路の話を聞きたい。


「……葵……」


「なぁに? 隼翔」


「……あのさ……今日、遼祐と話をしてたとき、たまたま進路の話が出たんだ。……それで……オレも遼祐も大学に進学希望だったんだけど…………」


 って、オレの進路の話はどうでもいいんだよ‼


「そうなんだ」


 葵は、やさしくオレの話を聞いてくれている。


 ……でも違うんだ。

 オレが葵に話したいことは…………。


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