僕が愛しているのは義弟
「ところでどうするんだよ、隼翔。葵と一緒に帰るんだろ。あんなに女子たちが囲んでいたら、どうやって葵に声をかけるんだよ」
太一の言う通りだ。
あれでは葵に声をかけるのは難しい。
……声をかけるのが難しいのなら強引に葵を引っ張って連れ出そうか……。
……って、いや……それはちょっと……。
……って……ん?
葵の周りを囲んでいる女子たちの集団の中から手のひらだけオレたちの方に向けて何かをアピールしている。
……ひょっとして、あの手のひらは……葵……?
葵がオレたちの方に向けて手を振っているんだ。
葵‼
オレも葵の方に向かって思いっきり手を振った。
「おー、葵、オレたちに気付いてくれたのか」
太一も葵に手を振った。
「葵―‼」
梓も葵に手を振った。
そして遼祐も葵に手を振った。
葵は、葵の周りを囲んでいる女子たちに「ごめんね」という感じで、その集団から抜け出した。
女子たちの集団から抜け出した葵は、ようやくオレたちの方に来てくれた。
「ごめんね、隼翔兄」
「なんで葵が謝るんだよ」
「だって隼翔兄と帰る約束をしてたのに待たせちゃったから」