僕が愛しているのは義弟



 こうして葵の入学祝いは第三土曜日に決まり、今日のところはみんな帰ることにした。



 そしてオレと葵は初めて一緒に下校する。

 これも今日の新たな記念日のうちの一つ。


 満開の桜の木が並んでいる道。

 今日、登校したときと同じ道。

 そして新たな記念日にふさわしい道。

 そんな道をオレと葵は、ゆっくりと歩いている。


「隼翔」


「うん?」


「桜、見に行きたい。……あっ、ここの道も桜の木がたくさんあってすごくきれいで、とても良いのはもちろんだよ」


「うん」


 わかってる。


「ここの道とは別に、一度、家に帰って昼ごはんを食べてから、また改めて別の場所の桜も見に行きたいという意味で……」


「そうだな、見に行きたいな」


「オレ、桜を見るのに行きたい場所があるんだけど言ってもいい?」


「ああ、教えてくれ」


「いつもの思い出のあの場所に行きたい」


「ああ、そうだな、行きたいな。行こう」


「うん」





 そして家に着いて昼ごはんの時間になるまでオレの部屋で葵と一緒に過ごした。


 母さんと義父さんは仕事で姉ちゃんも外出しているから、今、家にいるのはオレと葵の二人だけ。


< 270 / 354 >

この作品をシェア

pagetop