僕が愛しているのは義弟



 ……太一、なんて疑り深いんだ。

 ……確かにオレは太一に噓をついている。

『好きな人はいない』なんて、そんなこと……。

 好きな人はいないどころか、オレには『愛している人』がいる…………。


「……もう、勘弁してくれ、太一」


「……どうしようかなぁ~」


「頼む‼ 太一」


「よし‼ じゃあ、お前に彼女ができたら、真っ先にオレに報告すること‼」


「あ……ああ、わかった、真っ先にお前に報告するよ」


 ……って、太一にそう言ったけど……彼女……じゃないからな……オレの場合は……。

 オレは葵のことを愛し続けたいと思っている。

 だから太一に報告することは……永遠にないだろう…………。


「よし‼ じゃあ、許す‼」


 ……太一……悪いな……。

 お前に噓をつくようなことになってしまって……。


 ……だけど、いつか太一に言えるだろうか、オレと葵のこと……。

 そうしたら、たぶん太一のヤツ、ひっくり返るだろうな……。



「あっ‼」


 突然、太一が血相を変えて大声を出した。


「なんだよ、太一、びっくりするだろ」


「……だっ……だって……あそこ……」


「ん?」


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