僕が愛しているのは義弟
遼祐はそう言うと、みんなに「じゃあ、また学校で」と言って歩き出した。
梓や太一や葉山さんや城田さんも「じゃあ、また学校で」と言って、それぞれの帰る方向へと歩き出した。
みんなそれぞれ帰る方向へと歩き出したのにオレは一人、帰る方向へと歩き出せずにいた。
たぶんオレは気になっていたからだ。
遼祐……。
ひょっとして遼祐は用があると言ってオレと違う方向へ行ったのも、葵に気を遣ったから……?
たとえ途中まででもオレと一緒に帰らないようにするために……。
理由はどうあれオレと遼祐が一緒にいるところを葵が見てしまったら……。
だから遼祐は葵のことを考えて一緒に帰るだけの短い時間でもオレと二人きりにならないように用があると言ったんだ……。
オレはすごく迷っていた。
今すぐ遼祐のことを追いかけて声をかけるか、このまま何も言わずにそのまま家に帰るか。
オレの心の中はすごく迷っている……そのはずなのに、足は一歩一歩前へ進み出している。
向かった先は……。
「遼祐‼」
オレは無意識のうちに遼祐の方へ向かい、声をかけていた。
「隼翔……」
遼祐は少し驚いたような表情をしていた。
「どうした?」