僕が愛しているのは義弟



 オレは梓に告白されたとき、まず太一のことが頭に浮かんだ。

 そして次に浮かんだのは葵とオレ自身のこと。

 オレと葵が恋人同士だということは今のところ梓にも言うことはできない。

 オレは本当のことが言えないまま梓に「梓の気持ちに応えることはできない」と伝えた。

 梓は「わかった」と言った後に、笑顔で「これからも友達としてよろしく」と言ってくれた。

 ……でも梓が笑顔になればなるほど、その表情は真逆に見えた。

 そんな梓のことを見ているとオレも辛くなった。

 オレは心の中で何度も梓に『ごめん』と言い続けた。



 ……あ……。


 そうだ……葵……。

 着替えたらすぐにリビングに行くと言っていたんだった。



 とりあえずリビングに行こう。


「隼翔、待ってたよ」


 リビングに入ってすぐに葵がそう言った。


「ねぇ、隼翔、テレビ観よ」


 葵がオレの手を握ってそのままソファーに連れていく。


 ソファーに座ったオレと葵は寄り添いながらテレビを観ていた。



 テレビを観ている間もオレは、梓と太一のことを考えていた。


< 339 / 354 >

この作品をシェア

pagetop