僕が愛しているのは義弟



「……葵……」


 オレは葵の呼びかけに驚いた。


「どうしたの? なんか、ぼーっとしてる……」


 葵はオレの顔をじっと見つめた。


「そんなことないよ」


 オレは、そう返答するしかなかった。


 なぜなら、梓に告白されたことを葵に言えるわけがない。

 とにかく葵に、このことを隠し通そう……。


「本当?」


 葵はオレの顔をじっと見つめながら覗き込んだ。


「ああ」


 オレは、とにかく葵に悟られないように心掛けた。



 それからもしばらくオレと葵はリビングでテレビを観ていた。

 手を握り、寄り添いながら……。


「隼翔」


 テレビを観ていた葵がオレの方を見た。


「うん?」


 オレも葵の方を見た。


「明日、卒業式だね」


「ああ、そうだな」


「どうだった? 高校生活」


「そうだなぁ……楽しかったよ。でも、やっぱり三年間あったわけだし、いろいろあった。でも、それも今となってはいい思い出だ」


「そうだよね。三年間だもん、いろいろあったよね」


「ああ」


「あっという間だった?」


「そうだな……過ぎてみればあっという間だったかな」


「そうなんだ」


 オレは、三年間の思い出を思い出せるだけ思い出していた。


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