僕が愛しているのは義弟



 そういえば葵は高校入学してからもうすぐで一年経つ。

 葵は、この約一年間どんな感じだったのだろう。


「葵はもうすぐで高校生活一年経つけど、どう?」


 オレは葵にそう訊いた。


「オレも隼翔と同じ。過ぎてみればあっという間だったよ。その間、楽しいこともあったし、いろいろかな」


 ……いろいろ……とはなんだろう……。

 訊きたいけど訊けない。


「そうか」


 オレは普通に返事をした。


「きっとオレも高校卒業まであっという間なんだろうなぁ」


「たぶんそうだろうな」


 オレはそう言って葵を抱き寄せた。


 葵もオレに寄り添った。


「……隼翔」


 オレに寄り添いながら葵はオレの名前を呼んだ。


「うん?」


 オレも葵を抱き寄せながら返事をした。


「……あのさ……」


 そう言いかける、葵。


「うん?」


 オレは葵が何を話すのか待っていた。


「隼翔が高校生活の中で一番思い出に残っていることって何?」


「一番……?」


「うん……」


 葵は純粋な眼差しでオレの顔をじっと見つめた。


「そうだなぁ……」


 一番思い出に残っていること……。


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