僕が愛しているのは義弟



 支度を済ませたオレは、朝ごはんを食べにダイニングルームに行こうと部屋を出ようとした。

 そのときドアをノックする音がした。

 ドアを開けると……。


「おはよう、隼翔」


 そこには葵が立っていた。

 葵は笑顔でオレのことを見つめている。


「おはよう、葵」


 オレも笑顔で葵に挨拶を返した。


「ちょっとだけ部屋に入ってもいい?」


 そう言って葵はオレの部屋に入った。


 オレの部屋に入った葵は、くるっと振り向いてオレの方を見た。

 そして……。


「隼翔、高校卒業おめでとう」


 葵は笑顔でそう言った。


「ありがとう、葵」


 改まって葵に『高校卒業おめでとう』と言われると、なんか少し照れてしまう。

 少し照れていたオレに葵は「照れてるの?」と無邪気な笑顔で訊いた。

 オレは「そんなことない」と言って照れていないフリをした。

 葵は、そんなオレの顔を覗き込んだ。


「隼翔……」


 オレの顔を覗き込んだままオレの名前を呼ぶ葵。


「うん?」


 そんな葵の顔を見つめながら返事をするオレ。


「今日で高校生活も終わりだね」


「ああ」


「寂しい?」


「そうだな……寂しくないと言ったら嘘になる」


「そうだよね。寂しくないわけないよね」


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