僕が愛しているのは義弟(おとうと)



 オレが太一の方を見ると、太一は、すでに妙な笑顔をしていた。


「今度、オレとお前と梓の三人で、どこか行かないか」


 三人で……? 太一と梓の二人じゃなくて、オレも入れて三人……?

 もしかして……。


「……まさか太一。お前、梓と一緒にどこかに行きたいからオレをおまけに入れるのか」


「違う、違う。久しぶりに三人でどこかへ行くのもいいんじゃないかと思ってな」


 ……? なんか……。


「なぁ、いいだろ?」


 太一は、すがりつくような眼差しでオレの方を見ていた。


 ……まぁ、理由はどうあれ、太一や梓と、どこかに行くということに関しては特に断る理由もないけど。


「梓にはもう言ったのか?」


「いや、まだ何も言っていない」


 まだ梓には言ってないのか……。


「……それでな……」


 太一は言いかけて沈黙した。

 そしてオレから少し視線を逸らした。

 視線を逸らした太一は、少し難しい顔をしていた。


「……太一?」


「…………」


 太一は、まだ難しい顔をして黙っていた。


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