僕が愛しているのは義弟
「そうなの。父さん、元気だった?」
母さんは普通に返事をしてくれた。
「うん、元気そうだったよ」
「そう。それは良かった」
母さんは少し微笑んだ。
「父さん、少し老けてたよ」
「そうよね。あれから十年経つものね」
「少し老けてたけど父さんは父さんのままだった。だから、すぐにわかったよ」
「そう。とにかく元気そうで良かった」
「……うん」
母さんはいつものようにやさしく接してくれた。
母さんに言って良かった、父さんのこと。
このまま言わなかったら心の中でつかえたままだった。
「ただいま」
葵が帰ってきた。
「おかえり、葵」
母さんは、いつものように葵にやさしく言った。
「おかえり、葵。オレも帰ってきたばかりだよ」
「そうなんだ。じゃあ、もう少し早かったら帰る途中で隼翔兄と会えたんだね」
「そうだな」
オレがそう言った後、葵は笑顔で、
「ねぇ、隼翔兄、一緒にテレビ観ようよ」
葵はオレの腕をつかんで、そう言った。
「ああ」
オレは葵に腕をつかまれたまま、そう返事をした。
「隼翔と葵は本当に仲が良いわね」
母さんはとても笑顔だった。
「でしょ」