僕が愛しているのは義弟



「そうなの。父さん、元気だった?」


 母さんは普通に返事をしてくれた。


「うん、元気そうだったよ」


「そう。それは良かった」


 母さんは少し微笑んだ。


「父さん、少し老けてたよ」


「そうよね。あれから十年経つものね」


「少し老けてたけど父さんは父さんのままだった。だから、すぐにわかったよ」


「そう。とにかく元気そうで良かった」


「……うん」


 母さんはいつものようにやさしく接してくれた。


 母さんに言って良かった、父さんのこと。

 このまま言わなかったら心の中でつかえたままだった。





「ただいま」


 葵が帰ってきた。


「おかえり、葵」


 母さんは、いつものように葵にやさしく言った。


「おかえり、葵。オレも帰ってきたばかりだよ」


「そうなんだ。じゃあ、もう少し早かったら帰る途中で隼翔兄と会えたんだね」


「そうだな」


 オレがそう言った後、葵は笑顔で、


「ねぇ、隼翔兄、一緒にテレビ観ようよ」


 葵はオレの腕をつかんで、そう言った。


「ああ」


 オレは葵に腕をつかまれたまま、そう返事をした。


「隼翔と葵は本当に仲が良いわね」


 母さんはとても笑顔だった。


「でしょ」


< 78 / 354 >

この作品をシェア

pagetop