僕が愛しているのは義弟



 太一には『今日は、ちょっと』と言ったけど、実は特に用事があったわけでもなかった。

 ただ、今日は一人で歩いていたかった。

 別に何かあったわけでもない。

 ただ、なんとなく一人になりたかった、それだけだ。


 オレは太一に『寄り道はまずい』と言いながら、オレ自身、歩いている方向は家とは違う方向だった。



 オレは、ただ歩いて歩き続けた。

 そして、あの場所にたどり着いた。


 その場所は、オレと葵の思い出の場所。


 いつ来てもここは、とても自然が美しい。

 緑も美しい。

 花も美しい。

 風で葉が揺らぐ音も美しい。

 この空間の全てが美しい。

 そして、ここから見る空も雲も、いつも以上に美しく見える。

 夜になると、満天の星空が美しく輝きを放つ。

 この場所は特別な空間だ。

 現実にはない、まるで夢の空間にいるかのようだ。


 オレは、この場所によく来たくなる。

 ただ最近は前のようにそんなに来ることができない。


 オレは、その空間の中に入ろうとした。


 ……? 誰かいる……。


 オレは、そっと近づいて行った。すると……。


「葵⁉」


「……隼翔兄……?」


 そこにいたのは葵だった。


「葵もここに来てたのか」


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