僕が愛しているのは義弟
「うん。なんか急に来たくなって」
「オレもだよ。偶然だな」
オレは葵と偶然会えたことが嬉しく思った。
偶然会えたのもそうだけど、葵もオレと同じ気持ちだったのだと思うと、より嬉しく思った。
オレはあまりにも嬉しくて、今にもあふれだしそうになる笑みを半分くらいに抑えながら葵に話しかけていた。
オレは葵に自分の全開の笑みを見せるのは、なんとなく照れくさかった。
「そうだね、偶然だね」
葵もそう言うと、いつものように笑顔になった。
オレは葵のように素直に笑顔になれることが少し羨ましいと思った。
オレも、できれば葵のように嬉しいときは素直に嬉しい表情を思いっきり出したい。
「葵、お前も今日、テストだったもんな」
葵も今日はテストだった。
「うん」
「お前も気分転換しに来たのか」
「うん。ここに来ると心が和む。本当に最高の場所だよ」
「そうだな」
「……でも、今日は少しの時間しかいることができない。テスト勉強があるから」
葵は、この場所に少しの時間しかいることができないからか、少し寂しそうな様子だった。
「そうだな」
オレも、そんな寂しそうな葵を見ていると少し寂しくなった。