僕が愛しているのは義弟



 すると、そこへ十歳くらいの女の子が葵のところに駆け寄ってきた。


「ありがとう、ビー玉拾ってくれて」


「……あっ、これキミの?」


 我に返ったように葵がその女の子にビー玉を渡した。

 すると、少し離れたところから八歳くらいの男の子を連れた女の人が葵がビー玉を渡したその女の子に、


「充希」

 と呼んでいた。


 その呼び名に葵が少し反応したような気がした。


 その女の人は葵の方に来て、


「拾ってくださって、ありがとうございました」


 その女の人の声に葵がまた少し反応をしたような気がした。


 そして葵が顔を上げた。


 葵が顔を上げると、その女の人は突然顔色が変わった。


「葵……」


 えっ? 葵の知り合い? オレは葵の顔を見た。


 すると葵の顔色も変わっていた。


「母……さん……?」


 えっ? 母さん? ……えっ? ……これは一体……。

 ……えっ? 葵がその女の人のことを『母さん』と呼んだってことは……そういうことだよな。

 ……となると、さっきのビー玉の女の子は…………。


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