僕が愛しているのは義弟



 一度だけ……? 遠くから……?


「……本当は、もう会ってはいけないと思っていたのですが…………」


 会ってはいけないって葵のこと……?


「……でも……でも、どうしても葵の顔が見たくて、一度だけ葵を陰から見守ろうと思ったんです。……そうしたら……葵の周りには新しいお母様とあなたたちご兄弟の姿が……。なので、そのときにあなたのことは一度だけ……」


「……そうだったんですか」


「……なので、もしよかったら、葵と一緒に私の話を聞いてもらえませんか」


 葵の母さんがそう言ってくれたのでオレも同席させてもらった。


 ……って……ん? おっ……‼

 ……よく見ると……いや、よく見なくても、葵は葵の母さんにとてもよく似ている。

 葵の母さんも、とてもきれいな人だ。

 声も透き通るようにとてもきれい。


「……葵」


 葵の母さんが話し始めた。


「……充希よ。あの子が赤ちゃんのときに、あなたと充希は数か月だけ一緒にいたわよね。その充希は今年で小学四年生になるの。時が経つのは早いわよね」


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