僕が愛しているのは義弟



 葵の母さんはそう言うと、充希ちゃんと優真くんを呼んだ。


「充希、優真、おにいちゃんたちに、あいさつをしなさい」


 すると充希ちゃんがお母さんの様子に気付いた。


「……お母さんどうしたの? なんか目が真っ赤になってるけど大丈夫?」


 充希ちゃんは心配そうにお母さんの目を見つめていた。


「大丈夫よ。ちょっと目にゴミが入っちゃって」


 お母さんは充希ちゃんを心配させないようにそう言った。


「……そうなんだ。でも、あんまりこすっちゃダメだよ」


 充希ちゃんは心配しながらお母さんにそう言った。


「……うん、ありがとう、充希」


 充希ちゃんの言葉にお母さんは少し笑顔になった。


 お母さんの心配をした後、充希ちゃんは葵とオレの方を見た。

 そして……。


「おにいちゃんたち、さようなら」


 充希ちゃんは、そう言った。


「おにいちゃんたち、さようなら」


 優真くんもそう言った。


「……さようなら」


 そして、葵も……。


 ……だよな。

 充希ちゃんが葵と別れたのは赤ちゃんのとき。

 葵の顔は覚えているわけがないよな……。


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