Ti Amo
「あー、緊張したっ!」
二人が出て行ってすぐに、
智くんがそう言ってベッドの隣にある椅子に腰かけた。
「…あたし的には、
あなたにも出て行って
欲しかったのだけれど。」
「…冷たいねー、5年ぶりだよ?
俺は結愛ちゃんに会えて嬉しいよ。」
「………間違いがあった」
「…え?」
突然、意味不振な言葉を発したあたしに
意味が分からないと言った顔をする智くん。
「…だから、
あなたは一つ間違ってる」
「…何が?」
「さっき、あたしのこと
“相変わらず正直で、真っ直ぐだ”
って言ったでしょ?
あれ…、間違ってるわ」
「…どういう意味?」
「あたしは正直だけれど、
真っ直ぐじゃないの。
曲がったことを言ったし、
あたしの心はひねくれてる」
あたしは無表情でそう言った。
すると智くんは一瞬無表情になったかと思うと、
急に笑いだした。
「ははっ…
やっぱ相変わらずだよ、結愛ちゃんは」
「どこに笑う要素があるのかが分からない」
「可愛いなあー
でもさ…それって、
俺の話をちゃんと聞いてくれてた、って
ことだよね」
「…っ、別にそんなことないし」
その後、二人とも沈黙した。
なんともいえない空気が
どのくらい流れただろう…。
智くんが口を開いた。
「…辛かったよな、ごめん。
結愛ちゃんが一番辛い時、
傍にいられなくって…」
あたしの頭を撫でながら優しい声で、
だけど悔やんだ表情でそう言った。