ダンデライオン 〜美奈子
麻有子達が東京に帰ると、また変わらない毎日に戻る。
軽井沢は 徐々に夏モードになって、人が増え始める。
「美奈子先生のお姉さん、連休に来たの。」
休み明け、美奈子は 同僚の春菜に聞かれる。
「うん。賑やかだったよ。姪が すっかり小学生らしくなっていて。」
美奈子は答える。
その年から、美奈子の保育園に異動になった春菜。
美奈子とは同期で、保育園では一番親しくしていた。
「姪御さん、お受験したんだよね。」
と聞き返され、美奈子は 絵里加達が通う 名門小学校の名前を言う。
「凄い。その小学校、東大よりも 倍率が高いって評判だよ。」
近くにいた別の保育士も 話しに加わる。
「うん。姪の従兄妹達も 通っているから。お姉ちゃん、プレッシャーだったみたい。次は甥もいるし。」
美奈子が答えると、
「美奈子先生も プレッシャーじゃない?」
と別の保育士に言われ、春菜は少し顔をしかめた。
「私は全然。お金持ちと結婚する気はないから。まあ結婚できれば、の話しだけど。」
美奈子は ケラケラ笑って答える。
麻有子と美奈子を比べて、色々言う人はいる。
でも美奈子は 全く気にしていなかった。
心配そうに 春菜が美奈子を見ていた。
美奈子は “大丈夫” という意味を込めて、春菜に目で頷く。