未明の三日月
「どこへ行くの?」
美咲が助手席に乗り込むと、聡は 静かに 車を発進させた。
そっと横を向いて 美咲は聞く。
「少しドライブしよう。海でも行こうよ。」
と聡は、はにかんだ笑顔を見せた。
「海?この寒いのに。しかも夜だよ。」
美咲が驚いた声で言うと、聡は 声を出して笑う。
そして、
「車の中なら寒くないって。」と言った。
「そうだけど。車の中なら、どこに停めても同じじゃない。」
美咲は呆れて笑う。
「この辺、夜開いている店って ファミレスくらしかないんだよ。田舎だから。」
と聡は言う。
美咲を 気使っている言葉が 嬉しくて、
「知っているわ。私だって ここで育ったんだもの。」
と美咲は 優しく答える。
「そうだよな。何か本城、感じが変わったから。勘違いしちゃうよ。」
と聡も笑った。