未明の三日月
5
成人式は 心身ともに 美咲を大人にした。
東京に帰った美咲は、脱皮した蝶のように 軽やかな心になっていた。
「美咲、故郷で良い事あったでしょう。」
と香奈に言われる。
「うん。初恋の人に会ったよ。」
少しだけ本当のことを言う美咲。
「わあ。どんな人?」
香奈は明るく聞く。
「うーん 明るくて、バスケが上手で。人気がある男の子だったの。」
美咲が懐かしそうに言うと
「変わっていた?」
香奈も興味津々で聞き返す。
「大人になっていた。当たり前か。」
と明るく笑う美咲。
聡と過ごした時間は、甘く優しかったから。
あの時間が 美咲の心を温かく解放していた。