未明の三日月
就職活動は順調で、美咲は 希望する大手損害保険会社から 内定通知を受け取ることができた。
時々 メールで近況報告をし合う聡に、内定を伝えると
『美咲、すごいな。丸の内OLだね。』
聡の返信に 美咲は微笑む。
『ありがとう。横山君はどう?』
美咲が聞くと、
『一応、内定はもらったけど。美咲の会社とは 比較にならないよ。』
聡は自虐的な言葉を 美咲に返した。
『これからバイト頑張って、就職までには 少し広い部屋に引っ越しするよ。』
美咲が 前向きな言葉を返すと
『そうしたら泊まりに行こうかな。』
聡は久しぶりに 思わせぶりなことを言う。
『おいでよ、引越しの日に。』
照れた美咲のメールに
『それって、引越しの手伝い?』
と聡も明るく返してきた。
『正解!』
聡が美咲とのことを、優しい思い出にしていたら嬉しいと 美咲はいつも思っていた。
美咲にとって 聡との時間は、優しい思い出だったから。