未明の三日月
6
就職してすぐの研修で、美咲は麻有子と仲良くなった。
軽井沢出身の麻有子も、美咲と同じような中学時代を過ごしていた。
「軽井沢なんていいなあ。」
高級リゾート地としての 軽井沢しか知らない美咲の言葉に、
「そう思うでしょう。でも、住民の生活は 全然違うの。貧しくて、悲しくなるくらい質素で。」
と麻有子は寂しそうに言う。
とても美人なのに、まるでそれを隠すように 控えめな麻有子。
多分、麻有子も 成績が良いことで 目立っていたのだろう。
だから、それ以上目立たないように 地味に生きてきたのだと 美咲は思った。
「そうなの?意外だね。軽井沢って リッチなイメージだもの。」
美咲が驚いて言うと
「そうよね。だから辛いの。豊かな人が見えるのに 手が届かないの。」
美咲は 麻有子の心に 共通する思いを感じた。
麻有子は 同期入社の中で一番 心を許せる友達になっていた。