未明の三日月
ゆったりと話す佳宏。
佳宏の言葉は、すべてが 美咲の心に響く。
食事が終わる頃には、美咲は 驚くほど佳宏に惹かれていた。
美咲にとって、初めての思いだった。
「ごちそう様です。すごくおいしかった。」
店を出て、佳宏に お礼を言う美咲。
佳宏は そっと美咲の手を握った。美咲の身体を 電流が走る。
「もう一軒、行く?」
と聞く佳宏に、美咲は首を振って
「ずっとこうしていたい。」
と佳宏の手を握り返した。
数時間前までは、ただの同僚だったのに。
明日も仕事なのに。
溢れる熱い思いを抑えることができない。
そのまま通りにでると 佳宏は タクシーに手を上げた。