未明の三日月
東京には たくさんの人がいる。
でも 豊かな生活を している人は、ほんの一部だった。
間口が広く、誰でも 受け入れるこの街で、豊かな生活を 維持することは とても難しい。
高校を卒業した美咲が 東京で暮らし始めた時は ただ 解放感に感動していた。
まわりに干渉されない自由。
閉鎖的な田舎との違いに驚いた。
おかげで素直な自分になれた。
でも、大人になると気付く。
東京で 幸せに生きることの難しさ。
東京には天井がない。
登りつめることを望むと、どこにもゴールは見えない。
大手企業で働く美咲は、一般的なOLよりも 高収入だった。
自由で 豊かな生活をしていても、孤独からは 逃げられない。
経済的には 恵まれていても、それだけでは 満たされなかった。
佳宏に愛させれ、美咲も佳宏を愛して。
美咲は 初めて気づいた。
人生を 分かち合える相手がいて、初めて 満たされることを。
愛する人のためなら、もっと頑張れることを。