からふる。~第17話~
「さーやちゃん終わった?」


「うん。今丁度終わったところだよ。しゅうくんも終わったの?」


「おれの方はもうバッチリ。でさ、ちょっといい?」


「うん」



私はまだ食堂で熟睡中の黒羽くんをちょっと気にかけながらしゅうくんと外に出た。


10月になると肌をすり抜ける夜風が心地いい。


今は暗くて分からないけど木々も少しずつ色付いて来ている。


寮から数十メートル先にある謎のベンチに2人で腰掛けた。



「今日はお疲れ様。さーやちゃんの料理全部おいしかったし、サプライズ企画も良かった。さすがだね」



しゅうくんの大きな手の平が私の頭に乗る。


胸がキュンとなってほのかに頬が熱を帯びる。



「しゅうくんの装飾も素敵だった。センス良いね、しゅうくんは。私はセンスないから」


「そんなことないよ。お洋服もいつも可愛いし、料理の盛り付けも鮮やかでキレイだし」


「ありがとう。だけど洋服は元家政婦さんに選んでもらったものが多いし、なんかイマドキじゃない。流行に疎いし、世間知らずだからなぁ、私」



とそう言った次の瞬間。


ふわっと抱き寄せられ、私の脳内はパニック。


血は沸騰し、頭のてっぺんから湯気が出そう。



「さーやちゃんの知らないことはオレが全部教えてあげる」


「しゅうくん...」


「だからさ...」



しゅうくんと向き合い、彼の瞳に私が映る。



「オレと付き合ってくれない?」


「えっ...」



な、な、な...。


今何て?


何て言った?


つ、つ、つ...付き合って...くれない?


う、う、う、嘘...。



「えっ、えっと...その...あの...」


「無理して今答えださなくていいよ。返事は今度のデートが終わってからで大丈夫だから。デートの日は12月25日でいいかな?もしかして凜が先に...」


「25日はまだ何も...」


「なら、その日オレとデートね。さーやちゃんを絶対捕まえるから覚悟しておいて」



私は圧倒され、ゆっくりと頷いていたのだった。





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