大好きだったよ、ずっと
 無我夢中に走り出した
私の住む街は危険な街。暴走族が主にいる半グレが集うところ
みんなはだから近づかない
でも私はあえてそこを通った
もう何があっても良い、死んだって構わない。そんな心で走っていたその時だった
「おい、待て‼︎」
近くにいる人は全員振り返るほど大きな叫び声が聞こえた
一瞬でも自分に言ってるんじゃないかって期待した。
あるわけないのに、この世の誰一人として私を見つけることはできない。と言うよりも探そうとする人はいないから
私はいらない人間だから
「待てって言うのが聞こえないのか!?」
まだ聞こえてくる。
もう叫ばないで
聞こえるたびに期待する自分が惨めに感じる
無我夢中に走れば当然行き止まりがある
知らない工場の中に気づけば入っていた
戻ろう。そう後ろを振り返ると勢いよくバイクが近いてきた
そして降りてヘルメットを脱ぐとこちらへだんだん近づく
「待てって聞こえなかったか?」
「聞こえてたけど、私じゃないだろうって思って」
「なんでそう思った」
「そんなの私なんかを気にする人なんていないからっ!」
「なら、俺はどうなる?」
「え?」
後ろのフェンスにぶつかり男の手はすぐ顔の横
「お前の涙を見て、いてもたってもいられなかった俺は、おかしいのか?」
「どう、いう」
「本当はほっとこうとさえ思った。無視すればする程に胸が締め付けられるように痛かった」
何故だろう
彼の言葉は胸に刺さる
「お前、なんで夏なのに長袖なんだ?」
そんな疑問とともに手首を握られた
「いっ・・・‼︎」
「?っおまえもしかして」
無理やり袖をまくられその実態がさらされる
「はぁ、やめろとは言わない。けどなんでやったか聞きたい」
正直言いたくない
だって初めて会った人に話したところでこの先あう可能性はないかもしれない。ただ私の心が軽くなるけどその後の後処理はしてくれないはずだから
「言いたくない」
「・・・分かった。名前は?」
「なんでそんなこと聞くの」
「いーから」
「・・・佐伯柚」
渋々そう言った
「柚、今は言わなくて良い。だが次会ったときは聞くからな。暇ならここに連絡しろ」
「私に構わなくて良いよ」
「は?」
「私と関わっても楽しいことなんてひとつもないし、嫌になるだけだよ。」
これで良い。これでまた惨めな思いはしなくて済む、なのに
「誰がそんなこと決めた?俺は興味がなかったら最初からお前に話しかけてない。楽しいか楽しくないかは俺が決める。余計なことは考えるな」
初めてだった。こんな人と出会ったのは、
「んじゃ、帰るぞ。家どこだ」
「・・・」
「お前、外泊は平気か?」
「う、うん」
「なら早く乗れ」
どこ行くの?と聞きたかったけど無理やりヘルメットを被せられ何処かへ向かう
少し経った頃
「着いたぞ」
「?ここは?」
「俺のアジト。ちなみに俺の部屋は最上階だ」
何十回建てかわからない。首が疲れるくらい高く見上げないと全体が見えなかった
お金持ちなの?アジトって何?
連れられるまま最上階へ
「テキトーに過ごして良いぞ」
「あの、やっぱり帰る」
後ろを振り返り歩き出したとき
「帰るってどこにだ?家か?」
「そ、そうだよ」
「本当は帰りたくないんじゃないのか?」
「っ」
「いいから大人しくここにいろ」
そうして一晩を迎えた
朝起きて当たり前のように隣にいる
そして私を抱きしめてる。まるで離さないかとでもいうように抱きしめられてる
「っ、起きたか?」
「うん、だから離してほしい」
「もうちょっとこうしてたいからだめ」
昨日とは別人みたい
胸に顔をすり寄せてきて
そういえば名前、聞いてなかったな
でもいいや私も寝よとそのときだった
「りゅーとー、なんで昨日集会来なかっ・・・って女の子⁉︎」
「ん?なんだ泉か。朝からうるさい」
目を擦りながらゆっくり起きていく
「ちょっと説明して!なんで龍斗がこん部屋に女の子連れてきてるの⁉︎」
「拾った」
「拾ったって女嫌いは治ったの?」
「知らね、なんか柚は平気」
呆然とこっちを見つめてくるからどんな反応していいか困る
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