愛溺〜番外編集〜
「なんか愛佳先輩、変わりましたね」
「そう?気のせいじゃない?」
なんてはぐらかすけれど、自覚はある。
もう自分を偽るのをやめたからだ。
前まで仲良くしていた友達も、まだ慣れないようで戸惑われることの方が多い。
「なんかサッパリした感じです!」
「何それ、よくわからないよ」
「サバサバって言うんですかね?
俺はどっちの愛佳先輩も素敵だと思います!」
「ありがとう。
そんな寛太の方が変わってると思うけどね」
かわいい系だったはずの寛太がかっこよくなったのだ。
今じゃ高校一年には見えないほど大人びている。
とはいえ一つ一つの表情や動作は、まだまだ子どもらしいけれど。
そんな寛太だからこそ、昔とは違う私を素直に受け入れてくれたのかもしれない。
本当に良い後輩を持てたものだ。
そして学校に着くと、それぞれの学年で指定されている駐輪場で自転車を停める。
それほど距離は離れていないため、自然とふたりで靴箱のある場所に向かうのだけれど。
「あっ、寛太がまた美少女な先輩と登校を…!」
「くそっ、いいな」
「お前ら〜、こっちにまで聞こえてるぞ?」
その途中で寛太のクラスメイトらしき男子たちと会ってしまい、からかわれていた。
やはり寛太は中学同様、いじられる方なのだろうか。
「じゃあね、寛太。
私はこれで」
「え、あっ…愛佳せんぱ…」
とはいえ、その原因は私だったようで。
すぐさまその場から離れる。