愛溺〜番外編集〜
「最近よく一緒に登校してない?」
「ま、まあ…途中で会うからね」
「途中で会うからって、それでもダメに決まってるでしょ!?」
「ただの後輩だよ?相手が単に人懐っこいだけ」
「いや、あの後輩はイケメンだからダメ」
「はい?」
イケメンだからって…逆に何ならいいのだ。
それに向こうも先輩としてしか見ていないだろう。
「相手は新入生だし、ふたりとも朝来るの早いから人にも見られず噂になってないけど…もし学内でも関わりを持つようになって、瀬野にもバレたら…」
「───俺が、何?」
背後からの突然の声に、思わず肩がビクッと跳ねた。
振り返ると、そこには涼介が立っていて。
今日はいつもより来るのが早い。
「来るの早いね」
「一本早い電車に乗れたんだ」
「そう」
素っ気ない返しになるけれど、内心は嬉しい。
普段一緒の時間が極端に減った分、会えるのが嬉しいのだ。
「それで、ふたりは何の話していたの?」
「ああ、なんか沙彩が…」
「はーいストップ!女同士の秘密の会話を探ろうとするのはよくないなぁ!?」
別に隠すことでもないため、素直に話そうとしたけれど。
どうしてか、沙彩の手で口元を塞がれ、さらには誤魔化してきた。
「野々原さんの反応を見てると余計に気になるなぁ」
「べ、別にね…?ほら、今日のホームルームは体育祭のことだねって!」
明らかに焦っている様子の沙彩。
別に隠すことでもないのに。
「体育祭かぁ…今年はリレーに出ようかな」
「愛佳、リレー出るの!?」
去年や一昨年は体育祭なんてやる気が起きなかったけれど、今は楽しみたい気持ちでいる。
この感情の変化は自分でもすごいと思うほどだ。