愛溺〜番外編集〜
②甘さ増加中
ホームルームでは、体育祭の出場種目決めなどが行われた。
そして最後には“体育祭実行委員”という面倒な役職を決めることになったのだが───
「……最悪」
「まあ仕方がないね。満場一致だったから」
放課後。
せっかく今日は涼介の家に行くという予定があったというのに。
体育祭実行委員に選ばれたばっかりに、放課後の集まりに参加させられることになったのだ。
「あれは絶対わざとでしょ!?」
みんな私と涼介が良いって、面倒ごとを押し付けてきて。
目の保養になるとか、やる気が出るとか。
適当な理由をつけて私たちを推薦してきたのだ。
「まあまあ、高校最後の思い出として頑張ろう?」
「涼介は優しいから…嫌なら嫌って言えばいいのに」
「愛佳も一緒なら、俺は何でもするよ」
「…っ、バカ」
そんなこと言って喜ばせようとしても無駄なんだから。
面倒なものは面倒だ。
「早く終わらないかなぁ…」
最悪の場合、今日の予定がなくなってしまうかもしれない。
「俺との時間が惜しいってことでいい?」
「……任せる」
「任せるって、ズルいな」
わかってるくせに。
敢えて言わせようとする涼介は意地悪で嫌いだ。
もちろん本音を口にできるはずもなく、黙ったまま視聴覚室に向かった。
視聴覚室の中には、すでに半数の人たちが集まっていた。
3学年、1クラスに男女ひとりずつのため、合わせると結構な人数になるだろう。
「見て、瀬野くんと川上さんだ」
「噂通り…」
うん、気まずい。
先ほどからチラチラと視線を感じ、居心地が悪い。
けれど涼介は注目されることに慣れているのか、いつも通りの様子だった。
それはなんだか恨めしい、なんて。